コベナンツのカスタム指標 — 特約書どおりの分子・分母を式で定義し、判定・根拠・ウェイバーの仕組みにそのまま載せる
コベナンツの指標を、組織ごとに式で定義できるようにしました。モニタリング画面の新しいタブ「指標の定義」で、実績の項目・試算表の科目名・既存の指標を四則演算と関数でつなぎ、ネット有利子負債/EBITDA倍率やインタレスト・カバレッジ・レシオなどを特約書の定義どおりに作れます。作った指標はコベナンツで選ぶだけで、閾値の決め方・連続期数・ウェイバー(免除・猶予)・本部の承認・通知がそのまま効きます。計算は決定論で、AIは使いません。
コベナンツのカスタム指標
2026年10月18日、コベナンツ(covenant、財務制限条項)の指標を、組織ごとに式で定義できるようにしました。 これまでの指標は、有利子負債/EBITDA倍率・DSCR・預金残高・純資産・経常利益・償却前経常利益・自己資本比率・DEレシオなど、判定の仕組みに組み込んだ18種に限られ、分子・分母にどの科目を入れるかを金融機関の特約書どおりに決めることはできませんでした。今回の機能で、EBITDAの定義、ネット有利子負債、約定弁済額に何を含めるか、といった特約書ごとの定義の差に、開発なしで合わせられます。
この記事の要点
- 式で指標を定義: 「計画vs実績管理」の新しいタブ「指標の定義」で、組織ごとに指標を作れます。四則演算・括弧・数値・変数名・関数(max / min / abs / coalesce / prior)を使えます
- ひな形6件を同梱: ネット有利子負債/EBITDA倍率、インタレスト・カバレッジ・レシオ、固定長期適合率、営業CF対有利子負債比率、純資産の前期比、DSCR(税引後・簡便法)
- コベナンツは指標を選ぶだけ: 閾値の決め方(固定値・前期末の実績×比率・基準値×比率・決算期別の閾値表)、連続期数、ウェイバー(免除・猶予)、営業店の確認と本部の承認、通知とWebhookが、組み込みの指標と同じように働きます
- 根拠に式と値の出所: 判定の根拠に、式の原文と、変数ごとの値・出所(実績のどの欄か、追加指標か、試算表のどの科目か)を残します
- 保存前に試算: 企業を選ぶと、最新の年次実績で値と根拠を確かめられます(保存はしません)
- 計算は決定論: 同じ実績と式からは同じ値が出ます。AIは使いません
できること
- 組み込みの18種にない指標を、特約書の定義どおりに作る(例: 現金及び預金を差し引いたネット有利子負債の倍率、固定長期適合率)
- 組み込みの指標の定義を、自行の特約書に合わせて作り直す(例: 法人税等を差し引いた返済原資によるDSCR)
- 単位を指標ごとに選ぶ(千円 / % / 倍 / 日 / 回 / 単位なし)
- 判定する実績の期間を選ぶ。既定は「年次の実績だけで判定」です。外すと月次の実績でも判定し、月次の実績が12か月分そろっていれば直近12か月に合算して「蓋然性」を判定します
- CSV一括登録のmetric_name列に「custom:キー」と書いて、カスタム指標のコベナンツをまとめて登録する
使い方
1. 指標を定義する
- 上部メニュー「すべての機能」→「モニタリング」→「計画vs実績管理」→「指標の定義」タブを開きます
- 「ひな形から作る」で6件のひな形から選ぶか、「新規作成」で一から作ります
- キー(英小文字・数字・アンダースコア。コベナンツやCSVで
custom:キーとして使います)、表示名、式、単位、説明、根拠条項を入れます - 企業を選んで「試算」を押すと、その企業の最新の年次実績で値と、変数ごとの値・出所を表示します
- 保存します
2. コベナンツで選ぶ
「コベナンツ設定」タブで、指標名にカスタム指標(custom:キー)を選びます。閾値・比較演算子・閾値の決め方・連続期数・決算期別の閾値表・根拠条項は、組み込みの指標と同じように設定します。
3. 判定と根拠
実績を登録すると、組み込みの指標と同じタイミングで判定します。チェック履歴の「根拠」には、式の原文と、変数ごとの値と出所が出ます。試算表の取込から作った実績では、どの科目をいくらで足したかの内訳も出ます。
式を変えて保存するときは、その指標を使うコベナンツを、各企業の最新の年次実績で判定し直せます。
式の書き方
使える変数
- 実績の基本項目: 売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、減価償却費、EBITDA、総資産、純資産、有利子負債、現金及び預金 など
- 実績の追加項目: 支払利息、法人税等、売上総利益、販管費、流動資産、固定資産、固定負債、営業キャッシュフロー、約定弁済額等 など
- 組み込みの指標: 有利子負債/EBITDA倍率、DSCR、自己資本比率、DEレシオ など
- 同じ組織の他のカスタム指標: キーか表示名で参照できます(循環する参照は保存できません)
- 試算表取込の科目名: 試算表の取込で実績に入った勘定科目の名前
演算子を含む名前は、[有利子負債/EBITDA倍率]のように角括弧で囲みます。全角の演算子・括弧も使えます。
使える関数
| 関数 | 意味 |
|---|---|
| max(A, B, …) / min(A, B, …) | 最大値 / 最小値 |
| abs(A) | 絶対値 |
| coalesce(A, B, …) | 先頭から順に、値のあるものを使う |
| prior(X) | 前期末(年次)のX |
例
| 指標 | 式 | 単位 |
|---|---|---|
| ネット有利子負債/EBITDA倍率 | (有利子負債 - 現金及び預金) / EBITDA |
倍 |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ | EBITDA / 支払利息 |
倍 |
| 固定長期適合率 | 固定資産 / (純資産 + 固定負債) * 100 |
% |
| 営業CF対有利子負債比率 | 営業キャッシュフロー / 有利子負債 * 100 |
% |
| 純資産の前期比 | 純資産 / prior(純資産) * 100 |
% |
| DSCR(税引後・簡便法) | (経常利益 + 減価償却費 - 法人税等) / 約定弁済額等 |
倍 |
金額はすべて千円で計算します。比率を%で判定するときは、式の中で100を掛けます。
注意
- 判定不能の扱い: 式が参照する変数の値が実績に無いとき、0で割ることになるとき、prior()の前期末の実績が無いときは、「判定不能」として理由(例:「支払利息」の値が無い)を根拠に残します。計算を飛ばしたり、0とみなしたりはしません
- 既定は年次の実績だけで判定: 1年分の損益を使う式は、年次の実績で判定するのが前提です。「年次の実績だけで判定」を外した指標は、月次・四半期の実績でも判定します
- AIは使いません: 式は字句と構文を規則で読み取り、決定論で計算します
- 削除の制限: 使っているコベナンツがある指標は削除できません。先にコベナンツの指標を変えるか、コベナンツを削除してください
- 権限: 閲覧はモニタリングを見られる人、作成・更新・削除はモニタリングを管理できる人(アナリスト以上。コベナンツの管理と同じ)です