コベナンツ判定エンジンv2 — 判定の根拠を保存、従来型の財務制限条項、月次試算表による「蓋然性」、ウェイバーと本部承認
コベナンツの判定ごとに、どの科目をどう足したか・閾値をどう決めたかなどの根拠を保存して画面に表示するようにしました。純資産維持や経常損益の2期連続赤字の禁止など従来型の財務制限条項のテンプレート、決算期別の閾値表、契約番号、判定不能の記録、月次試算表の直近12か月による「蓋然性」の判定、ウェイバーの記録、営業店の確認と本部の承認、CSV一括登録、判定期限超過の一覧を追加しました。計算は会計の式で行い、AIは使いません。
コベナンツ判定エンジンv2
2026年10月10日、コベナンツ(covenant、財務制限条項)の判定の仕組みを作り直しました。 判定の結果だけでなく、その結果に至った根拠を判定ごとに保存し、「計画vs実績管理」の画面で確認できます。計算は会計の式と設定した条件だけで行い、AIは使いません。
この記事の要点
- 判定の根拠を保存: 判定ごとに、計算式、使った実績の値と科目の内訳、閾値の決め方、連続期の数え方、定義による調整、対象の期間を残します
- 従来型の財務制限条項: 純資産維持(前期末の75%以上)、経常損益の2期連続赤字の禁止、償却前経常利益の2期連続赤字の禁止、債務超過の禁止、有利子負債/EBITDA倍率15倍以内の5件をテンプレートに追加しました
- 決算期別の閾値表と契約番号: 期ごとに閾値が変わる定めと、契約・特約書ごとの管理に対応しました
- 判定の状態を6つに: 充足・抵触・要注意・蓋然性・判定不能・免除。指標を算出できない期は、黙って飛ばさず理由とともに「判定不能」として残します
- 月次試算表による「蓋然性」: 直近12か月の月次実績で、決算期末の判定とは別に、条件を満たさない見込みを示します
- ウェイバーと承認: ウェイバー(waiver、免除)・条件変更・権利行使の猶予を記録でき、その期間の判定は「免除」になります。営業店の確認と本部の承認(差戻し)を判定ごとに残します
- 通知・一括登録・期限管理: 抵触と蓋然性のアプリ内通知、CSVでの一括登録、/monitoringからの試算表取込、判定期限を過ぎたのに実績が無いコベナンツの一覧を追加しました
判定の根拠
チェック履歴の各行の「根拠」から、次を確認できます。
- 計算式(例: 有利子負債 ÷ EBITDA(営業利益+減価償却費))
- 使った値(千円)と、その内訳。試算表の取込から作った実績では、長期借入金・短期借入金などの科目名と金額が出ます
- 閾値の決め方(固定値、決算期別の閾値表のどの行か、前期末の実績や基準値に比率を掛けた値か)
- 連続期の数え方(例: 2期連続のうち何期目か)
- 定義による調整(例: リース債務を有利子負債から除いたこと、除けなかった理由)
- 対象の期間(年次・月次・直近12か月)と、単体か連結かの目印、ウェイバーの適用
従来型の財務制限条項
これまでのテンプレートは、金融庁「貸付特約書の書式例」に沿ったものでした。今回、地銀の融資実務で使われる定め方のテンプレートを5件追加しました。閾値は目安の初期値で、案件ごとに確認して変更できます。
- 純資産を前期末の75%以上に維持(前期末の実績に比率を掛けて閾値を決めます)
- 経常損益の2期連続赤字の禁止
- 償却前経常利益(経常利益+減価償却費)の2期連続赤字の禁止
- 債務超過の禁止(純資産が0を超えること)
- 有利子負債/EBITDA倍率15倍以内
閾値の決め方は「固定値」「前期末の実績×比率」「基準値×比率」「前期末・基準値の高い方」から選べます。連続期数を2以上にすると、1期目の不充足は「要注意」、連続期数に達した期に「抵触」になります。途中で条件を満たせば数え直します。
決算期別の閾値表と契約番号
- 決算期別の閾値表: 貸付特約書の書式例 第4条6項(1)のように、決算期ごとに閾値を定める場合に使います。対象の期と一致する行、無ければその前で最も新しい行の値を使います
- 契約番号: 同じ企業に複数の契約や特約書があるとき、コベナンツをどの契約のものかで区別できます。一覧・チェック履歴・CSV・根拠に出ます
- 指標の定義: 有利子負債からリース債務・役員借入金を除く、比率を出す前に金額を百万円単位に丸める、を選べます。経常利益・償却前経常利益・純資産も指標に選べるようになりました
判定の状態
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| 充足 | 条件を満たしている |
| 抵触 | 条件を満たしていない(連続期数にも達している) |
| 要注意 | 条件を満たしていないが、連続期数に達していない |
| 蓋然性 | 月次試算表の直近12か月で条件を満たしていない。説明を求める契機で、違反ではない |
| 判定不能 | 指標を算出できない(例: 減価償却費の行が無くEBITDAを算出できない)。理由を根拠に残す |
| 免除 | ウェイバー・条件変更・権利行使の猶予の期間中 |
稟議の審査ポイント、企業価値担保権の準拠の状況、ダッシュボードの違反の件数で違反として数えるのは「抵触」だけです。
月次試算表による「蓋然性」
貸付特約書の書式例では、決算期末に財務制限条項を満たさない蓋然性が高くなった場合に、借り手が説明する定めがあります。月次の実績が12か月分そろっている企業では、損益は直近12か月(LTM、last twelve months)の合計、残高は最新月の値で年次の指標を計算し、条件を満たさなければ「蓋然性」とします。決算期末の判定とは区別し、「抵触」にはしません。12か月分そろっていない場合は判定しません。
ウェイバー・条件変更・権利行使の猶予
チェック履歴の「ウェイバー登録」から、種類(免除・条件変更・権利行使の猶予)、期間、理由、条件、決裁者・会議体、決裁日を記録できます。登録・削除すると、期間に入る判定を再評価し、条件を満たしていない判定は「免除」になります。
営業店の確認と本部の承認
充足以外の判定には、営業店の「確認」と、本部の「承認」または「差戻し」をメモつきで残せます。チェック履歴は、企業・状態・重要度・営業店の確認・本部の承認・年度で絞り込めます。
通知
抵触と蓋然性の判定が出ると、アプリ内で通知します。抵触はWebhook(covenant.breached)でも通知します。これまではAPI経由の実績取込だけが対象でしたが、画面での実績登録と試算表の取込でも送るようにしました。
CSV一括登録と試算表の取込
- CSV一括登録: コベナンツと実績を、それぞれCSVで一括登録できます。「内容を確認」で登録せずに検証し、結果を見てから確定します。文字コードはUTF-8とShift_JIS、1回に2,000行まで。実績の金額は千円で、1行ごとにコベナンツを判定します
- 試算表の取込: 「実績データ」タブの「試算表を取り込む」から、企業を選んで取り込めるようにしました。企業詳細からの取込と同じ手順です
判定期限超過の一覧
ダッシュボードに、判定の期を過ぎたのに実績が登録されていないコベナンツを一覧で出します。期限の目安は、年次が期末から3か月、四半期が四半期末から45日、月次が月末から15日です。期限を過ぎたものは、組織ごとに1通にまとめてアプリ内で通知します。
修正
- 閾値が0のコベナンツ(EBITDAを正の値に維持する、など)が抵触したときに、重要度の計算でエラーになる不具合を直しました。閾値が0のときの重要度は「高」とします
- 同じ期の試算表を取り込み直すと、判定が重複して残る不具合を直しました。同じ実績の判定は、取り込み直したときに置き換えます
以前の判定
この変更より前の判定は、抵触を「抵触」、それ以外を「充足」として表示します。根拠は記録されていないため、根拠の画面には「根拠の記録なし」と出ます。実績を保存し直すと、新しい仕組みで判定し直し、根拠が付きます。