お知らせ 2026年8月11日

企業価値担保権の対象企業はどこまで? — 株式会社・合同会社・特例有限会社・個人事業主の扱いを整理

企業価値担保権を設定できるのは会社法上の「会社」に限られます。株式会社・合同会社は対象、特例有限会社はどうなるのか、個人事業主・医療法人はなぜ対象外なのか。金融機関の実務担当者向けに、法律上の対象範囲と「実務で向いている企業」の違いを整理します。

企業価値担保権の対象企業はどこまで? — 株式会社・合同会社・特例有限会社・個人事業主の扱いを整理

2026年5月25日に施行された 事業性融資推進法企業価値担保権。制度の解説記事は増えましたが、現場で最初に聞かれるのはシンプルな質問です — 「うちの取引先は使えるのか?

本記事では、担保権を設定できる会社の範囲 (法律上の対象) と、実際に制度が機能しやすい企業像 (実務上の適性) を分けて整理します。

要点 3 行

  1. 設定できるのは会社法上の「会社」のみ: 株式会社と持分会社 (合名・合資・合同会社)
  2. 特例有限会社は対象に含まれる整理: 会社法上「株式会社」として存続しているため
  3. 個人事業主・医療法人・NPO 等は対象外: 法人形態の変更 (法人成り等) をしない限り利用できない

1. 法律上の対象 — 「会社」であること

Q. 企業価値担保権を設定できるのは誰か?

企業価値担保権の設定者 (担保を差し入れる債務者) になれるのは、会社法上の「会社」 に限られます。具体的には:

会社形態 対象か 備考
株式会社 ○ 対象 上場・非上場、規模を問わない
合同会社 (LLC) ○ 対象 持分会社の一形態
合名会社・合資会社 ○ 対象 同上 (実務上の利用は限定的と想定)
特例有限会社 ○ 対象に含まれる整理 会社法上は「株式会社」として存続しているため (下記)
個人事業主 × 対象外 事業と家計の分離が制度の前提
医療法人・学校法人・NPO 法人 × 対象外 会社法上の会社ではない
一般社団・財団法人、組合 × 対象外 同上

Q. 有限会社 (特例有限会社) は使えるのか?

2006年の会社法施行により、旧有限会社は 「特例有限会社」= 会社法上の株式会社 として存続しています (会社法整備法)。したがって、特例有限会社も企業価値担保権の対象に含まれる という整理になります。

地域金融機関の取引先には特例有限会社が数多く残っています。「有限会社だから使えない」という誤解で選択肢を狭めないことが重要です。

Q. 個人事業主はなぜ対象外なのか?

企業価値担保権は「事業全体 (総財産) を一体として担保にする」制度です。個人事業主は事業用財産と生活財産の区別が法的に曖昧なため、対象から外れています。個人事業主の取引先が制度を使いたい場合は、法人成り (株式会社・合同会社の設立) が前提になります。

2. 登記と担保権者 — 実務の前提

  • 効力発生要件は登記: 企業価値担保権は、債務者の本店所在地の 商業登記簿への登記 をしなければ効力が生じません。登記簿には企業価値担保権の区分が設けられます。
  • 担保権者は免許制の信託会社: 担保権者になれるのは 企業価値担保権信託会社 (内閣総理大臣の免許) に限られます。銀行・信託銀行等は「みなし免許」により受託可能です。
  • 通常の事業活動は自由: 担保設定後も、通常の事業活動の範囲内での財産の処分・利用は自由です。範囲を超える処分 (重要財産の譲渡等) には担保権者の同意が必要になります。

制度の全体像は 【完全解説】企業価値担保権とは何か? を参照してください。

3. 「法律上使える」と「実務で向いている」は別物

対象範囲は広く設計されていますが、制度が機能しやすい企業像 は絞られます。refinancier では次のように整理しています。

向いている企業

  • 中堅企業 (売上 10〜500 億円)、業歴 5 年以上で実績データがある
  • 技術・ブランド・顧客基盤など 無形資産が強い
  • 不動産が乏しい (オフィス賃借、IT・サービス業等)
  • 事業承継期で 経営者保証から脱却したい

慎重に検討すべき企業

  • 創業間もなく実績データが不足している
  • 不動産担保で十分に資金調達できている
  • 事業規模が極端に小さく、評価・モニタリングのコストが見合わない

つまり金融機関の実務では、「対象かどうか」の次に「事業価値をどう評価し、どう継続モニタリングするか」が本題になります。評価手法は 企業価値担保権の評価方法 で、金融機関側の準備は 地銀の実装ロードマップ で解説しています。

4. 金融機関の実務担当者がまずやること

  1. 取引先ポートフォリオの棚卸し: 会社形態 (株式会社・合同会社・特例有限会社) と無形資産の強さで対象候補を抽出
  2. 個人保証に依存している先の洗い出し: 事業承継を控えた先は制度活用の有力候補
  3. 評価・モニタリング体制の整備: 事業性キャッシュフローと無形資産を継続的に評価できる仕組みづくり

refinancier は、企業価値担保権に対応した AI 企業価値評価・継続モニタリングを SaaS で提供しています。機能紹介 または お問い合わせ からご相談ください。


参考資料 (一次情報)

本記事は制度の一般的な解説であり、法的助言ではありません。個別案件の適用可否は、最新の政令・施行規則・監督指針および専門家の助言をご確認ください。

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